
ムスク(麝香)の起源は、かつてジャコウジカの腺分泌物から採取されたものに遡ります。その極めて優れた持続性と、他の香料の魅力を引き立てる独自の調和力によって、古代の調香における最も貴重な成分として珍重されてきました。
現代においては、野生動物の保護と安定した供給を両立させるため、そのほとんどが「合成ムスク(ホワイトムスク)」へと置き換わっています。ムスクの放つ香調は、どこまでも温かく、まろやかであり、香水のベースノート(基調)として欠かせない存在です。フローラルやウッディなどと重なり合うことで、まるで肌そのものが香り立つような、官能的で心地よい余韻を醸し出します。
野生からの決別と技術の進化——ムスクの歩んだ軌跡は、まさにフレグランス工藝の発展の歴史そのものであり、現代の香水にとっても、決して欠かすことのできない永遠の「魂(ソウル)」なのです。