
『ロミオとジュリエット』は、言わずと知れたシェイクスピアの最も有名な悲劇の一つです。時空を超えて現代人の心に響くこの物語は、反目し合う名家のはざまで、周囲の反対を押し切り純粋な愛を貫こうとした若い恋人たちの姿を描いています。二人の早すぎる死は、最終的に両家の和解をもたらしました。この作品はシェイクスピアの時代から絶大な人気を誇り、『ハムレット』と並び、最も頻繁に上演される戯曲となっています。
第三幕では、ティボルトとロミオがジュリエットを巡って激しく衝突します。その最中、逆上したティボルトによってロミオの親友マキューシオが刺殺されてしまいます。深い悲しみのあまり理性を失ったロミオは、ティボルトの凶器を奪い取り、彼の胸を突き刺しました。この事件によりロミオは追放刑に処され、最愛の人との引き裂かれた未来を告げられたジュリエットの乳母は、取り乱しながらこう嘆きます。
「男なんて誰もあてにならない、不誠実で偽善者ばかり! 誓いを破り、嘘を重ね、どいつもこいつも詐欺師だよ。 ああ、誰か私の男(召使い)はどこにいる?……命の水(アクア・ヴィテ)を持ってきておくれ。 この悲しみ、この苦しみ、この憂鬱のせいで、私はすっかり老け込んでしまうよ。」 —— 乳母|『ロミオとジュリエット』(第三幕 第二場)
「お酒で憂いを晴らす」という行為は、文化の垣根を超えた人類共通の営みです。それはロミオとジュリエットの物語のように、悩みを忘れ、苦痛や哀愁を和らげるための万能薬。アルコールが身体に染み渡る時、人は静けさと温もりを取り戻し、フラットでニュートラルな状態へと帰っていくのです。
乳母が叫んだ「アクア・ヴィテ(Aqua Vitae=命の水)」の起源はローマ時代にまで遡り、当時は洗礼の水や蒸留の産物を指す言葉でした。シェイクスピアの時代には、あらゆる種類の烈酒(スピリッツ)を包括する言葉となり、主に「治療薬」や「滋養強壮の薬酒」としての役割を担っていました。 時が流れた現代において、この「命の水」という言葉は、アルコール度数96%を誇る精留ウォッカ(スピリタス)などを指すことが多く、これらは分類上「ニュートラル・スピリッツ(原料アルコール)」や「ファインアルコール」と呼ばれます。驚くほどの高濃度ですが、これらはすべて「食用アルコール」の範疇にあります。純粋なアルコールは高い揮発性を持つため、その匂いは刺激的で強く、独特です。口に含むと「無味」に感じられたり、一時的に味覚が麻痺して「ピリピリ・チクチク」とした刺激だけが残るため、一瞬にしてすべての雑音を忘れさせる力を持っています。
アルコールは、スキンケアや化粧品、飲料酒、さらには日常的な消毒スプレーにまで広く用いられていますが、香水にとっても絶対になくてはならない存在です。「アルコールに敏感・アレルギーがある」という声が少なくない中で、なぜ香水にはこれほど多くのアルコールが使われているのでしょうか?
その理由は、アルコールが極めて優れた「溶劑(ソルベント)」だからです。香りを永く保存しなければならない香水において、アルコールは優れた有機溶媒として機能します。香料を均一に希釈し、香料内の有機成分を保護することで、酸化や腐敗による変質、そして「香りの劣化(香りの変化)」を防ぐのです。同時に、アルコールの持つ高い揮発性は、肌に纏った瞬間に香料を均一に広げながら自らは素早く立ち去り、香水本来の香りを自然に表現させます。異臭を発生させたり、変色させたりする副作用がないことも、アルコールが選ばれ続ける理由なのです。
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